建築知識2023年5月号の「猫のための間取り」特集にモクセイハウスが掲載されたのですが、
⇒(https://tuki-note.com/post-3134
記事にまとめるために飼い主の住まい手さんへヒアリングをさせていただいて、猫と人にとって良かったことや気に入った場所、逆にイマイチだったこともあったことがよく分かりました。
記事で図解付きで掲載されてますが、さらに詳しく解説しようと思います。

モクセイハウスの場合、住まい手から「猫と暮らすから」という理由での要望はほとんどなく、「猫が屋外に出られる出入口をつけてほしい。」という希望だけでした。
いっしょに暮らす3匹の猫がいずれも保護猫なので外に出たがることが多く、屋内だけで生活させるのが難しいということでした。
この要望以外は、人にとって気持ちよい家を考えて設計した結果、このおうちは猫にとっても好ましい場所がたくさんある家になったという感じがします。

保護猫に限らず、猫にとって家の中が退屈にならずに変化があり、自由に走り回れて運動ができて、外の空気を感じたり、外の景色が見えるといった環境がとても大切になるようです。
モクセイハウスは都会の狭小地に建ってますので、猫が出入りできる中庭などを設ける敷地の余裕はなく、代わりに2階のベランダがに猫も自由に出られる屋外スペースになっています。

このベランダの屋根は一部ガラス屋根になっていて、明るく空が見えて日差しが家の中に届くようになっているのですが、この開放感は猫にとっても良かったようです。
 
廊下つきあたりのトイレの壁に出入口の小さなキャットドアを設置しています。
ほどよい季節にはベランダでくつろぐ姿も。
真夏も真冬も、必ず一度はベランダに出てテリトリーの見回りをするんだそうです。
完全に室内に閉じ込めたまま屋外に出さないのは、保護猫にとっては多大なストレス。
しかし敷地外に出して近隣に迷惑を掛けることはできないので、敷地内でくつろげる屋外スペースは必須のようです。
 
そして、2階には塔屋のキャットウォークに上がるためのハシゴがあり、猫たちは1階から2階、そして塔屋まで一気に駆け上がることを楽しんでいるとのこと。
この塔屋は本来は、密集地に建つこの家の周辺が、今よりも更に建て込んでも2階や1階に十分に光が入るように、日光の取り入れ口として計画されたものです。(https://tuki-note.com/works/works-2013
それが結果的に猫のいい遊び場になり、運動できてリラックスできるお気に入りの場所になってくれたようです。
そしてこのハシゴを上ったてっぺんから2階を見下ろしたり、外の景色を見るのが好きな様子。
高いところから見下ろせる場所、窓の外が眺めやすい場所はお気に入りなので、そこかしこに用意しておくとよいようです。
冬は日が当たっているところで日向ぼっこしてるようです。

 
下は猫目線の写真。こんな感じで見下ろせる場所が好きみたいです。
ちなみにベランダの右側に造り付けたキャットステップは失敗でした…。
猫たちは登りやすいハシゴを使い、キャットステップには見向きもせず。
それもそのはず、もっと一段ごとの段差を小さくして、高さ30センチ程度に押さえないと登りにくかったようです。
この写真の段差は50cm。
50cmをピョンと跳ぼうとすると、もっと一段の板のサイズが大きく、落ちないような巾と奥行がないと、猫も好んで使わないみたいです。残念!!

2階の床は杉板、一部は畳、そしてツインポリカを張った床もあります。
このポリカの床は1階に光を落とすため透明の床になっています。
床の材料は、猫の爪とぎに耐えうるか試行錯誤でしたが、杉板も畳もそんなにひどい状態ではなく、ポリカも肉球でそっと歩くので特に傷が気になるような状態ではありませんでした。
犬の方がポリカのような滑る材料は苦手かもしれません。
2階の杉板よりも1階の栗の板の方がきれいでしたので、堅い板材の方がきれいに保ちやすいかもしれません。
タタミでも爪とぎをたまにするようですが、困るほどではないようです。

床よりも杉の八角柱での爪とぎが激しくて、住まい手が麻布を巻いてからは止まったとのこと。
部屋の中央にあるような独立柱が一番やられてましたので、こちらも栗やケヤキといった堅い木を使った方がよかったと思います。
他は杉の巾ハギ板(厚み30mm)の間仕切り壁の角も、ガリガリと爪とぎにしてしまい、だいぶ擦り減っていました。
床など水平面よりも、垂直の柱や壁の角が要注意のようです。
よそのお宅でも木の建具の角がやられてましたので、垂直面の角に使う木材は堅いものを使うか、逆にツルっとした素材のもの、麻布のように爪にひっかかってしまうものなど、爪とぎにならない素材を使った方がいいかもしれません。
しっくい壁や腰壁の杉板などはあまり被害なし。
意外にも左官材は猫の爪とぎには魅力的でない様子。
出隅でなければ軟らかい杉でもやられていませんでした。とは言うものの、猫がガリガリしそうな手の届きやすい場所は、杉やスプルスといった柔らかい木材は避けた方が無難なようです。

(その2)に続きます⇒ https://tuki-note.com/post-3217

 

2023年10月14日    

“猫と人がともに暮らすための間取りと素材(その1)” への1件のコメント

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