猫と人がともに暮らすための間取りと素材(その1)

前回ブログからの続きです。
2階や塔屋やベランダは、猫たちが気に入ってくれた様子ですが、1階にもお気に入りの場所を見つけてくれたようです。


1階奥のキッチンの吊戸棚上も日なたぼっこができる、猫たちのお気に入りの場所です。
ここも飼い主の様子を上から見下ろせるし、窓の外を観察できるし、南の日が暖かいし、といろいろ好きな条件が揃っている場所のようです。
(ちなみに、ちょっとした調理の時は猫はこのまま吊戸棚の上で寛いでいて、長時間だったり火を使う調理の時は飼い主が安全な場所に下ろすそうです。)

1階のもうひとつのお気に入りの場所は、畳コーナーの上の天袋です。

天袋の中にエアコンが仕込んであるので、冬の暖房時はこの天袋が暖かく、猫たちの寝床になっているそうです。
設計時は、単なる収納用の天袋と考えていましたが、猫にとってはこのように体が収まる箱のような、隠れられる避難場所が必要なんだそう。
モクセイハウスでは「ビビり」の茶トラの子は特に隠れ場所が必要で、2階では押入の中に身を潜めている時もあるようです。
多頭飼いや多種飼いのときは、こういったエスケープゾーンがあると1匹でリラックスできて良いということです。
このように、人のために作った色んな場所を、結果的に猫が気に入って、好き好きに使って寛いで暮らしてることがわかって、結果オーライとなっていて良かったです。
 


ひとつだけ結果オーライとならなかったことがありました。
こちらで暮らす3匹ともが元は近所にいた野良猫で、それを見かねた今の飼い主が保護して、去勢・避妊手術などをしてからエサや排泄の世話をして飼っている状況です。
もともと外にいた野良猫なので完全な室内飼いにするとストレスがきつく、時々は飼い主が外の庭に出す予定でモクセイハウスは竣工しました。
しかし、住み始めて数年たって近隣から「外に出さないでほしい」という声が上がり、今では完全な室内飼いになっています。

2階のベランダは猫にとって貴重な外の空気を感じられる場所であったのですが、外に出さなくなったことで「このベランダから外に逃げようとするのでは?」と心配して、竣工時は腰までだったベランダの縦格子を、住まい手さんが後施工で軒まで格子を追加する工事をして転落防止を図っています。
(お知り合いに頼まれたそうで、私は把握できていませんでした。とほほ。。。)
2階から猫が飛び降りると、さすがの猫でも骨折などのケガを負うそうです。
建築知識の「猫のための間取り」特集にも詳しく解説されていました。


ベランダが檻のようになってからしばらくは、猫たちのストレスが大きい様子があったそうですが、今は慣れて落ち着いているとのこと。
ベランダに天窓を設けたり、猫が外の様子を眺められる窓をたくさん付けていたのは、本当に大正解でした。


ただ、ベランダを格子で塞いだことにより、災害時にこのベランダから避難することはできなくなってしまい、将来的に南側に隣家が建つと二方向避難ができない家になってしまいました。
やはり設計段階から、保護猫であっても都市部では室内飼いに耐えられる設計にするべきであったし、近隣からのクレームも予想して、飼い猫を外に出すことはできないと想定して、猫のための住環境をさらに考えておいた方がよかったな…と思ったのでした。
いつもの出入口・非常口・避難経路・防犯・転落防止といったことは、住宅であってもトータルで最初から考えておくべきことですので。                                       私自身が(猫を飼ったこともあるのに)猫アレルギー持ちでもあり、また、自宅近所の野良猫の糞尿被害に悩まされたこともあり、ご近所の方の気持ちが分からないわけでもありませんでした。
猫が好きな人も苦手な人も、そして猫自身も安全に快適に暮らせる家というのを考え直す貴重な経験になりました。
いろんな方や地域のいろんな事情を考えて、無理なく共生していけるように考えていく必要があることだと感じました。

2023年10月17日    

“猫と人がともに暮らすための間取りと素材(その2)” への1件のコメント

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