建築面積7坪の総2階建て、敷地面積12坪の小さな小さなおうちです。
 
オーナーは60代の女性です。
小物作りの趣味が高じて、好きな雑貨や作品を展示するギャラリーとして、生徒に教える教室として、お友達と集うサロンとして、また、暮らしを楽しむセカンドハウスとして使う住まいです。
 
イメージは「風の抜ける蔵」
最初は古い蔵を移築したいという希望でしたが敷地条件にあうものが見つからず、蔵のような古民家のような建物を新築しました。
 
西面以外の三方が立て込んだ敷地で準防火地域という条件の厳しい設計となりましたが、空間の狭さは感じないように、かえって「小さいことが気持ちいい」ように設計しています。
 
将来的には貸家や店舗付住宅としても使えるように、いろんな方に使いやすいようにも配慮しました。
 
敷地東南からの光が入る奥庭をもうけ、通り土間の正面に庭が見えることで視覚的に抜けと広がりを感じます。
隣家の窓とずらして視線が合わないように配慮した窓で、暗すぎず明るすぎず、程よい光と影を感じるスペースにしました。
 
寝室の建具を全てオープンにすると、1階全体がギャラリーになります。
階段はあえて一番奥に設け、来客に奥まで歩いて建物全体を楽しんでもらうようにしています。
 
2階は曲がり丸太を使った小屋組みが見える空間です。
7坪全体がサロンになり、大勢の食事会や教室もできるスペースになっています。
 
古建具や欄間を再利用したり、唐紙・漆喰・無垢板、土間やアイアンなど、伝統的な素材や手仕事の材料にこだわりつつ、古色の塗装はすべてDIYにするなどしてコストダウンも計っています。
アイアンと植栽工事をはじめ、住まい手のお友達も何かとご協力くださって美しい楽しい空間ができました。

新築住宅
所在地/兵庫県神戸市
構造/木造2階建て
 
延床面積 /46.38㎡ (14.02坪)
 
設計/暮らしの設計ツキノオト/船木絵里子
構造サポート/ワークショップ/安江一平
照明計画/Noi Planning Studio
 
施工/羽根建築工房
唐紙・表具/中野表具店
アイアン/(株)ナルディック
造園/施主と友人のDIY
塗装/施主と設計者のDIY
 
 

→小ギャラリーの家・Afanのブログ記事はこちら
 


 
 

 
 

西側外観。モダンな蔵をイメージしています。

 

アプローチ。道路からいきなり玄関が丸見えにならないように延石を立てています。前庭の植栽が白い漆喰に映えます。

 

玄関ポーチを囲った白い壁は隣地からの延焼を防ぐ防火壁です。玄関を防火壁で囲うことにより入口に木の古建具を使えるようにしました。

 

通り土間から玄関・寝室を見る。
黒・こげ茶・赤茶などの古色の塗装は施主と設計者ですべて塗りました。

 

シャワールームと水廻りはすべて現場施工のタイル貼りです。

 

トイレと洗面。レトロなモザイクタイルや昭和初期の照明器具などを使って、少し懐かしい雰囲気にしています。

 

玄関から通り土間・奥庭を見る。通り土間は色モルタル塗り、上り框はブビンガ、飾り棚はナラ、床板はクリの木です。

 

寝室から奥庭を見る。柔らかい光が射しこみます。

 

奥庭を望む。

 

窓前の柱間に板を差し込んで飾り棚にしています。

 

階段から土間を見る。

 

寝室から土間の飾り棚を見る。ニッチのダウンライトや梁からのスポットライトなど、照明プランナーにもご相談して見え方を検討しています。

 

寝室の建具をすべて閉めたところ。黒い襖には伊勢型紙で柄を摺っています。格子戸は古材文化の会から譲っていただいた古建具です。

 

寝室の唐紙の壁。淡い錆青磁色の雲肌の紙に、金色で五三の桐を摺っていただいたものです。照明にきらめいています。

 

オーナーがあつらえた屏風。こちらは赤い和紙に伊勢型紙をあわせています。

 

階段踊り場から土間を見下ろす。

 

階段のアイアン手摺。あえて細くして滑らかな曲線を描くように作っていただきました。

 

オーナーの「欄間と鉄を組み合わせてみたい」という要望でデザインしました。アンティークの欄間は古建具とあわせて京都に探しに行ったものです。

 

2階のLDK兼サロン。キッチンの収納ガラス戸はオーナーのお手持ちの古建具を加工して組み合わせました。曲り丸太は松、それ以外の構造材は杉です。

 

サロン南側の飾り棚。ハイサイド窓はアンティークガラスの二重窓にしています。

 

キッチンからLDを望む。壁の額も中野表具店へのオーダー。ペンダントやスタンドの照明はオーナーの手作りです。

 

キッチンから飾り棚を見る。キッチンのカウンターはブラックウォールナットの皮付きを自然な形のまま使っています。